ラテン語のウニベルシタス(universitas)を語源とする大学(英university、独Universität、仏université)の歴史は中世(12~13世紀)に始まります。当時から、代表的な大学では多くの法学者が、各国から集まってきた学生とともに研鑽を積んでいたといいます。このように法学という学問は大学という制度の黎明期から存在していました。日本でも法学部という学部の歴史は古く、大学制度が発足した当時から設置されていた代表的な学部の一つです。大学の文系学部においては看板学部であるといって過言ではないでしょう。
このような伝統ある法学という学問を学修する熊本大学法学部にはいくつかの特徴があります。まず、法学を柱としつつも政治学そして経済学の授業も提供することで、社会科学の学問を体系的に学べるようにしていることがあげられます。また、紛争解決に至る交渉過程や紛争を未然に防ぐための方策を検討する紛争解決学の授業も提供することで、社会に生じ得る法的紛争の分析能力および課題解決能力を備えた人材の養成を目指しているところも、本学部の特徴です。卒業時に取得できる学位は「学士(法学)」ですが、ここの法学は他大学には類を見ない独自の学問内容であるといえるでしょう。
さらに、熊本大学法学部は、九州・熊本という地域に根ざすことで国内的あるいは国際的問題に思いを馳せられる人材の養成を目指しています。そのために、この地で生じた社会問題、差別事例を実証的に研究することも行っています。そうした研究に若いみなさんがふれることは、きっとその後の生き方を思念する切っ掛けになると考えているからです。
熊本大学法学部の沿革は明治期の第五中学校そしてそれを引き継ぐ第五高等学校にまで遡ります。その校風は「剛毅木訥(ごうきぼくとつ)」、心がしっかりしていて飾り気がない様を表しています。そして本学部の所在地はマントに下駄履きの龍南健児が闊歩した当時のままです。伝統と自然豊かなこの地で、熊本大学法学部は、法学の修練を志すみなさんの人生の基礎体力の涵養に貢献してゆきたいと考えています。
このウエブサイトを通じて、熊本大学法学部に興味を持たれ、法学部の研究・教育活動をご理解いただけましたら幸いです。
熊本大学法学部は、加納治五郎やラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、夏目漱石が教鞭をとり、物理学者寺田寅彦、政治家池田勇人、ノーベル平和賞受賞者佐藤栄作らが学んだ第五高等学校を母体としています。新制大学としては、直接の前身である法文学部が昭和24(1949)年に開設され、昭和54(1979)年の改組により法学部が設置されました。
法学部が母体となった大学院としては、法文学部時代の昭和33(1958)年に法文学専攻科が、昭和47(1972)年には大学院法学研究科修士課程が設置され、平成20(2008)年には大学院社会文化科学研究科の博士前期課程、同後期課程に改組されて現在に至ります。また、平成16(2004)年には法曹養成研究科も開設されました。
法学部は黒髪北キャンパスの中央に残る19世紀に建てられた煉瓦造りの旧五高本館の北側、五高寮歌にも歌われた武夫原(ぶふげん)グラウンドの東側にあります。美しい煉瓦造りの五高時代の建造物と古い森に囲まれ、アカデミックで格調高い雰囲気を漂わせています。