教員リレーエッセイ

2011.10.04  <教員 Y.O>

「六法を開く喜び」
 先日,青法協会員のまま90年代初頭まで裁判官を勤められて,後に弁護士に転じた方と,ハンセン病療養所に長年閉じ込められてきた方とに,別々にお話を聴く機会がありました。
 驚いたのは,全く別のテーマでお話をおうかがいしたお二方から,それぞれ,六法を開けて憲法や法律を読むたびに,私たちにはこれだけの権利があるんだとの発見の喜びがあったとの全く同じ発言があったことでした。
 お二方とも,このお話の際に,「みなさんもそうでしょう」と尋ねられたのですが,私と一緒にお話をおうかがいしていた学生達を見回すと,みんな下を向いて「そんなことはないよね。六法なんか開けたくないよね」という雰囲気だったことも印象的でした。みんな六法にはほとほと嫌気がさしているのかもしれません。
 しかし,私も,どちらかと言えば,近頃の六法を読んでも,発見の喜びというよりは,法律改悪への怒りを感じることが多かっただけに,お二方から見れば,反応は学生達と同じだったはずです。
 ところで,法学入門という講義を初めて担当してみて,法学部で法律学を学ぼうとしている皆さんに,どこまで,法学によって私たちにとって大切なものを発見できることや,その発見がいかに素晴らしいことかを伝えきれたかと言えば,ほとんどできなかったと言わざるを得ません。今回受講された皆さんには,本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 そこで,今回おうかがいできたお二方のお言葉を肝に銘じて,改めて,六法に向かい直そうと思いました。来年度もう一度法学入門を担当して,今度こそ,もう少しましな講義をできるようにしたいと考えています。